みなさま、こんにちは。Kazuto Tanabe です。

今回は、ペーパーライクフィルムなどでお馴染みの BELLEMOND(ベルモンド)より登場した、小型 USB-C 充電器Ultra Mini 30W をご紹介します。本製品は、同ブランドとしては初の USB-C 充電器で、最大30Wの USB-PD 出力、PPS に対応し、様々なデバイスの充電に使用できるACアダプタとなっています。

・開封

パッケージ

内容物は本体と取扱説明書類

本体

プラグは折り畳めない

各種仕様はプラグ側に記載

USB-C 出力口

・なにこれ革命か?

本製品のパッケージを初めて手にした時、「中身入ってるか?」と不安にさせられたくらい本製品は軽量(実測34g)です。さらに、パッケージを開け、本体サイズの小ささにも驚かされ、iPhone に同梱されていた 5W 充電器と大差がないように感じました。(厳密に言えば若干大きい)

他社製20W充電器、本製品、他社製30W充電器と比較

また、上記の通り、他の30W GaN充電器と比較しても圧倒的な小ささで、20W充電器よりもひと回り大きい程度です。

プラグ折りたたみ式(奥)と比べるのはフェアではないが、それでも小さい

ここまで小さいと、小型 USB-PD 充電器にありがちな発熱問題が発生する可能性があります。しかし、本製品の最大出力である30Wを1時間半程度出し続けても、素手で触れる範囲内をキープしており、無理のない設計になっていることにも驚かされました。

小型、軽量、低発熱。どれをとっても、これまでに見てきた30W程度の USB-PD 充電器の中で最も優れており、革命的な製品が出てきたな。と感じました。

・本体の仕様をチェック

ここでは、USB-C ポートの Power Data Object(PDO)と USB-PD 以外の急速充電への対応の有無、過電流に対する保護機能の3点を確認しました。

PDO は表記よりも大きい値の場合、デバイスを過電流により破損させる恐れがあり、小さい場合は景品表示法上の問題が生じます。また、USB- PD 規格では USB-PD 以外の急速充電への対応を禁止しています。過電流に対する保護機能は、異常発熱・出火などを防ぐ目的の保安機能として実装されています。

問題のある製品の場合、主にこのいずれかのポイントで問題点が露見するため、本誌ではこの3つの検証結果を主に使用しています。

確認の結果、PPS に関する表記が本体の仕様と一致していないことがわかりました。(後述)また、今時の USB-PD 充電器にしては珍しく、12V出力にも対応しています。

また、USB-PD 規格では、USB-PD 以外の急速充電規格に対応することを禁じているため、Quick Charge などへの対応は規格違反となります。しかし、多くのメーカーがその他の急速充電規格との両立を安全な形で実現しており、本製品も実装方法に問題は見受けられなかったことから、大きな問題ではありません。

最後に、過電流に対する保護機能の動作状況を確認しました。

検証の結果、どのV数でも過電流による保護機能が動作することは確認できましたが、いずれも PDO の表記よりも1A程度高い段階で動作しており、しきい値としては高いものとなっています。

しかし、PPS 対応製品はこの傾向が強いこと、保護機能自体が存在し、正常に機能していることから、大きな問題になることはないと考えられます。

気休め程度のチェッカーでの可視化。iPhone を高速充電できている。

・PPSの表記が怪しい

上記の検証の通り、製品の仕様に過剰な反応を見せる程の問題は見受けられませんでした。

しかし、PPS の「表記」については「景品表示法上の問題が生じる恐れがある」と言わざるを得ません。本製品の仕様などには、5V-16V = 3A max との表記がなされています。

そもそも、PPS の下限は3.3Vであり、5V Prog も実装されていないことから、この5Vの意味がよくわかりません。また、先の画像の通り、通知された PPS は、3.3-11V/3A(9V Prog)、3.3-16V/2A(15V Prog)の2種類であり、3Aに届いているのは9V Prog のみです。

2種類の PPS を踏まえて、3A max という表記になっているものと考えられますが、15V Prog は2Aが上限であるため、ざっくり 3A max というと15V Prog でも3Aが使える(実際には使えない)と消費者が勘違いする可能性があり、これは景品表示法における優良誤認に当たる可能性があります。

と、なんやら小難しい話をしていますが、要は実装されている PPS を全て説明書などに記載すれば良いだけ、かつ表記が「わかりにくい」という話です。

なお、PPS の実装方法自体には問題はないため、安全上問題視すべき点がないことは繰り返しておきます。

・総評

製品はまずまずの完成度。しかし、仕様表記がイマイチ。

本製品の仕様には、過電流保護のしきい値が大きい点など、修正が望ましい箇所が若干あるものの、大きな問題は認められず、購入を推奨できる水準には達しています。

しかしながら、ユーザーへの実害の有無に関わらず、PPS の表記がおかしい点については、製品安全性と消費者利益の総合力を判断基準とする本誌としては看過できません。

近年では、あらゆるメーカーが USB-PD 充電器をリリースしており、サイズや重量を除けば、しっかりとした仕様の類似製品は星の数ほど存在します。

そのため、「サイズ以外で、わざわざ本製品を選ばなくても良いのではないか?」と感じました。

最終更新日:2022年5月11日

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